活動報告

新春PRフェスタ2017「第8回新春PRフォーラム」開催

新春特別講演 「トランプ時代の世界情勢とパブリックリレーションズ」 
講師: 青山学院大学 教授・
共同通信客員論説委員 会田弘継 氏

<講師略歴>

東京外国語大学英米科卒業。 共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長、公益社団法人日本記者クラブ理事などを歴任。 2015年4月から青山学院大学地球社会共生学部教授を務める。 近著に『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)など。  festa1

<講演概要>

 ■トランプ大統領誕生までの背景
トランプ大統領は、下層中産階級によるエリート階級への反乱の結果として生まれた。 米国は戦後、海岸地帯や五大湖周辺を中心に製造業が発達した。しかし1970年代以降米国内の下層中産階級が請け負っていた製造業が、中国など新興国へと移り、サービス産業への転換期が訪れる。 サービス産業は大きく二種類に分けることができる。一つはITや金融などの知識集約型の産業である。もう一つはそれらの産業をバックアップするための、運輸・小売・ホテル業等の産業である。サービス業の中でも前者は高収入で、後者は低収入のため、収入の二極化が進み貧富の差が生まれた。 また、2015年の国勢調査によると、2008年のリーマンショック後の株価は平均6,500ドル以下まで下がったが、2015年には1万7,000~8,000ドル(約3倍)にまで上がり、失業率は10%から5%以下にまで回復した。それにも関わらず、実質家計所得の中央値(平均値)は2007年から6.5%下がっている。これはつまり下級中産階級の労働者は豊かになっていないということだ。また貧困率は2.3%上がり、失業率も学歴によって大きな差ができた。高学歴であれば失業率はさほど高くないが、低学歴であればあるほど失業率も高い。さらに若年層は大学卒でも非正規雇用にしか就けない場合も多く、低賃金職種に就く人も多い。 このような背景から下級中産階級(主に白人労働者)がエリート階級や富裕層に対して怒りや不満を抱き、トランプ氏を支持するに至った。

■トランプの戦略
トランプ氏の選挙演説で戦略的な鍵を握ったのは、貧しい下級中産階級労働者が最も聞きたかった言葉を訴えかけたことだ。労働者にとって、トランプ氏の発言が本当か嘘かは重要ではなかった。彼がまさに自分たちに向かって語りかけているということに感銘を受けそれを真面目に受けとめた。しかしエリート層や知識人は、彼の言葉を字義通り理解して、虚偽をあげつらうだけで、その意図を真剣に受けとめていなかったため、状況を理解できなかった。そこに両者の大きなギャップがあった。 一方で大統領選におけるクリントン氏の失敗は、大差をつけて選挙に勝とうとしたことである。かねて民主党支持者が多い州には力を入れず、いきなり共和党支持者の領域に入り選挙票を奪おうとしたことに問題があった。反対に、トランプ氏は票を獲れる地域の支持を確実に固めていき正念場で勝利を勝ち取った。 また、トランプ氏はテレビや新聞などのメディアを上手に利用した。ハーバード大学で行われた分析によると、トランプ氏の予備選前のメディア露出を広告に換算すると、彼が他の共和党候補と比べていかにメディアを効果的に利用していたかがわかる。このような観点からトランプ氏の方が戦略的に優れていたと言える。  festa3

■「アメリカ第一主義」が及ぼす影響
トランプ氏の唱えた「アメリカ第一主義」は国内雇用を最も重視し、保護主義政策をとるため、日本や世界に長期的に悪影響を及ぼしかねない。 だがトランプ氏はそれをテーマにして白人労働者階級を動員し大統領選で勝利したので、まず彼らの期待に応えなければならない。 通商においては、TPPの離脱表明や日本の自動車メーカーへの言及が記憶に新しい。自動車をはじめ、多くの日本企業がメキシコに拠点を持ち、低コストで生産し関税なしで米国に輸出している。現在の米国は歴史上最も低いレベルの失業率だが、その内実は非正規雇用6割という状態だ。トランプ氏はこの体制を変えてもう一度製造業を国内に戻し、非正規雇用の労働者を正規雇用で働かせたいと考えている。 安全保障においては、「日本が負担する駐留米軍費用はまだまだ少ない」というトランプの発言から、今後防衛費を増やすよう要請がくることが想定できる。今後日本に何を求めてくるのかが懸念される。 移民政策においては、200万人以上の不法移民の強制送還や、不法入国者への罰則を強化する発言をしている。今までのずさんな移民政策を問題視している。
地球環境においては、外国の役人に米国内のエネルギー問題に口出しをされることを嫌悪し、パリ協定の脱退を主張しているが明言はしていない。また鉱山労働者が炭鉱の仕事に戻れるようにしようと石油・石炭のエネルギー産業を復活させようとしている。 金融においては、金融規制改革法を解体し、経済成長と雇用創出を促す政策で置き換える。米国は約8割がサービス産業なので、どのように製造業を取り戻していくのかを考えなければいけない。国内で製造すれば物価が上がるのは必至だがこの問題もどう解決するのかが課題となる。  このように「アメリカ第一主義」はすべてが雇用創出のための取引材料になる可能性があり、各国は今後の米国の出方を探っている。  

■実態の見えぬ「アメリカ第一主義」
「アメリカ第一主義」は外交面で従来の同盟を軽視しているので世界を混乱させた。大統領就任後のTPP離脱表明は日本に混乱を招いた。 安倍政権は米主導のTPPと中国主導のRCEPの二つに属すことで優位な地位を占めたいと考えていたが、トランプ氏のTPP離脱表明によって叶わずして終わってしまった。一方でフィリピンや東南アジアを巡り足固めもしてきたが、東南アジアの国々は中国との関係が強いため今後の展開は見えない。対中関係をマネージメントするためにはロシアが有力な駒になるので日露関係も重要になる。 また、日米関係や日韓関係が混乱しているため、安倍政権は特に日米豪印の関係を重視している。この4国のセキュリティ・ダイヤモンドが日米同盟をバックアップする仕組みを作っていくと考えている。今後は他国とのバランスをとりながら国民理解の範囲で、応分負担の日本の役割を考えていかなければいけない。    

■先進国の今後の課題
米国をはじめ、欧州や日本などの先進国も所得格差の問題に直面している。 2012年には米国の上位1%の人が米国全体の富の約4割を占め、上位10%の人が約8割を占めている。 中産階級の所得減に加え、米国では階層の固定化が進んでいる。つまり親が貧しければ子供も貧しいということだ。かつての米国は親が貧しくても子供の世代で成功できる可能性がある「チャンスの国」だったが、現在は日本やドイツ、カナダのほうがずっと「チャンスの国」に近い。 米国にかつて8割以上もいた白人が今は6割程度になり、白人は不安感を持っている。一方で不法移民数は現在では1100万人(東京の人口に近い)まで上っている。不法移民は米国の労働力として組み込まれ、最低賃金法も適応されないため、最も安い賃金で最も下の労働を請け負っている。この状況は米資本主義の一部になり、圧迫された白人労働者は絶望し、自殺やアルコール・薬物中毒で死亡する人も増えた。 米国が、国内雇用を重視したトランプ大統領を生み出した背景は、先進国共通の課題であり、G7などの場で対応を一緒に探っていくべきだ。festa3

■今後のパブリックリレーションズの役割
メディアの役割は非常に難しい時代に入った。誰もがパブリックリレーションズできる時代になり、今までとは大きくメディアの構造が変化したためである。
先進国において、現在の政治を動かしているのは「価値観をめぐる論争」である。日本で例を挙げれば、日の丸問題や靖国問題のような論争だ。戦後は貧しく食べることに必死だったが、物質主義の時代が終わると、様々な「価値観をめぐる論争」が先進国の政治を動かすようになった。 メディアは、この「価値観をめぐる論争」のような対立構造を煽ることもできるが、それを修復するよう努めることもできる。現代社会にある様々な対立構造に対して、メディアはどのように働きかけていくかが、パブリックリレーションズにおいて非常に重要である。パブリックリレーションズが潤滑油となって社会を繋いでいけることが望ましい。

※上記は2017年1月25日開催の新春PRフェスタ2017「第8回新春PRフォーラム」 第1部新春特別講演要旨です。

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2017年3月10日prsj
カテゴリー:活動報告

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